前回はレンズの種類についてご説明しましたが、その記事の中で少しだけ「レンズの明るさ」について触れました。
レンズの明るさについては今後、趣味やお仕事でカメラに携わっていくならぜひ知っておきたい知識です。
そこで今回は、レンズの明るさとその数値を表すF値(絞り値)のほか、絞りの違いによる写真の特徴について詳しくご説明したいと思います。
もくじ
レンズの明るさってどういうこと?
「レンズって透明のガラスでしょ?」
「レンズが光るわけでもないのに、明るいってなに?」
もっともなご意見だと思います。確かにレンズ自体は発光しません。
それでは、明るいレンズとは何を指しているのでしょうか?
- 明るいレンズ = 通る光の量が多いレンズ
レンズは被写体や景色を「光」としてイメージセンサーに伝えます。
明るいレンズはその光を取り込む量が多いので、暗いレンズに比べより少ない時間でその情報を送ることができます。
つまり、明るいレンズは暗いレンズより、速いシャッター速度で写真を撮ることができるのです。
これにより、ミスショットの大きな要因になる手ブレにも強くなるほか、暗いところでの撮影が得意なレンズとも言えるのです。
F値ってなに?
F値とは「絞り値」とも呼ばれ、一言でいうと
光が通る穴の大きさを数字で表したものです。
- F値(絞り値) = 焦点距離 ÷ レンズ口径
という式で算出されますが、難しく考える必要はありません。上で書いた「レンズの明るさ」を示している数字だと考えてください。
【!】レンズの穴 穴というのは、レンズ内の羽で形状される中心部の円形(に近い)の穴です。 レンズはこの穴を広げたり(開放する)しぼめたり(絞る)することで、取り入れる光の量を調整できるのです。 つまり撮影において「絞りを調整する」ということは、F値を変更させて取り入れる光の量を設定するということです。
F値は、F2 F2.8 F4 F5.6 F8 F11 F16 F22 のように表され、
- 数字が小さいほど開いてる(穴が大きい)→明るい
- 数字が大きいほど絞っている(穴が小さい)→暗い
となります。
ここがちょっとややこしいですね。
そして、
レンズに表記されてるF値は、そのレンズが持つ最大の明るさを示す数値(開放F値)です。
F値を絞る(数値を大きくする)のはどんなレンズでもある程度できますが、
開放する(数値を小さくする)のはレンズによって限界があります。
「開放F値が小さければ小さいほど明るく高価なレンズ」だと覚えてください。
また、開放F値が小さいレンズはどうしても口径(レンズのサイズ)が大きくなるので、同じ画角で開放F値が大きいレンズに比べ、レンズ自体も大型で重くなりがちです。
【!】F値の光の量の割合 F1.4 F2 F2.8 F4 F5.6 F8 F16 これは代表的なF値ですが、隣りの数字とある関係性があります。 ・1つ右の数字は光の量が半分、 ・1つ左の数字は光の量が2倍 になります。 例えば、F2に比べF8は4段階暗く、その光量の差は16倍ということになり、 同じ明るさの写真を撮るなら16倍のシャッター速度が必要になります。
絞りの違いによる「ボケ味」の特徴
ここまで、明るいレンズはF値を小さくして開放した時にたくさんの光を取り込めるので、シャッター速度も早く明るい写真が撮れるとお伝えしました。
- では、F値の違いは「明るさだけ」なのでしょうか?
もう1つの大きな違いがあります。それは「ボケ味」です。
写真においてボケ味を活かすとは、背景や手前にあるものをわざとぼかし、
メインとなる被写体だけにピントを合わすことで、よりその被写体を引き立てることです。
それは立体感を出し、時にはドラマチックで躍動感のある写真になります。
僕のように、そんなボケに憧れて一眼カメラを始めた方も多いのでは?
- そもそも「ボケ」とは何なのか?
その名の通り、ピントが合っておらずボケている状態です。
背景をボケさせるということは、背景をピントの合う範囲から外すということです。
ピントの合う範囲を被写界深度と言います。
そしてレンズのF値によって被写界深度は変わり、
開放された(F値が小さい)レンズほど、被写界深度が浅く(狭い)、
絞った(F値が大きい)レンズほど、被写界深度が深く(広い)なります。
つまり、
開放されたレンズの方がボケやすく、ボケたときの大きさも大きくなるのです。
浅い | 深い | |
F値(絞り値) | 小さい | 大きい |
焦点距離 | 長い | 短い |
撮影距離 | 短い | 長い |
プロがF値固定のレンズを使う理由
上記で、レンズには開放F値が表記されていると書きましたが、
F値の表記には、
1つの数字しか書いてないもの(例:F2.8)と
2つの数字が書いてあるもの(例:F3.5-5.6)があります。
1つしか書いてないものは、F値固定のレンズとなり
2つ書いてあるものは、ズームによって最小のF値が変わります。
多くのプロカメラマンは、F値固定のレンズを主として使用しています。
それは、ズームによってF値が勝手に変わってしまうと
画角によってシャッター速度を気にしないといけなくなるからです。
同じ明るさの写真で、F値を変更した時のシャッター速度の例(ISOは共通)
・F5.6・・・1/30秒
・F3.5・・・1/60秒
・F2.8・・・1/80秒
ただでさえ手ブレしやすい望遠撮影で、
最小F値を5.6にされるととても暗い写真になります。
かと言って手持ち撮影では、シャッター速度を長くするのにも限界があり、
結果、それを防ぐためにISO感度をあげることになります。
それにより画質は著しく低下します。
例えばブライダルなど手持ちで被写体を追う撮影では
勝手にF値が変わると、その都度シャッター速度やISOを気にしなければなりません。
それは一瞬を逃せないカメラマンにとってはとてもストレスになります。
そのため、多くのプロカメラマンは高価であっても、
ズームによって明るさを左右されないF値固定のレンズを使用することが多いのです。
まとめ
今日は、レンズの特性「F値(絞り値)」についてお話しました。
まとめとして、
- F値は小さい方が、光を取り入れる量が多いので明るい写真が撮れる。
- 明るいレンズはシャッター速度が稼げるので手ブレや暗い場所での撮影に強い。
- F値が小さい方が被写界深度が浅く、ボケ味も大きくなる。
- ズームによって勝手にF値が変わるレンズに要注意。
レンズのF値の特徴について、僕の主観も入れながら書かせてもらいました。
結局、高価なレンズにはそれなりの特徴があるということでしょうか。
皆さんもレンズを購入を考えているならば、
「レンズの明るさ」を判断基準のテーマとして考えてみてください。
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